再生可能エネルギーを利用した発電方法には様々なものがあり、それぞれに特徴があります。ここでは植物油を燃料に用いた液体バイオマス発電について、その一般的な優位性を取り上げます。
1. 電力の安定供給と電力システムの安定性に寄与
同じ再生可能エネルギーである風力や太陽光は気候変化や昼夜間で発電出力に大幅な変動が生じますが、液体バイオマス発電は基本的には火力発電システムであり、燃料が安定的に確保できれば気候変化の影響を受けずまた昼夜間にわたって安定した電力を供給することができます。
資源エネルギー庁の調達価格等算定員会が示した「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」(令和4年2月4日)においても、液体バイオマス発電を含むバイオマス発電一般について「安定的に発電可能で調整しやすいことから、発電予測が比較的容易、需要側が単体の電源から安定した電気を調達しやすい、調整力としても活用しやすい、といった特徴があり」と評価されています。
また、火力発電は同期発電機による慣性力があるため、電力システム全体の周波数変動に対してその解消に貢献することができますが、火力発電システムである液体バイオマス発電にも当然その能力があります。
さらに、液体バイオマス発電はディーゼルエンジン発電機を採用しているため、起動から送電まで短時間で対応が可能であり、電力系統におけるブラックアウト発生時にも自立起動が可能で、短時間で他の再生可能エネルギー源では対応できない規模の広域にわたる停電を復旧することができるので、国はレジリエンス電源(電力システムの緊急時に回復力を有する電源)として位置づけています。
前述の調達価格等算定員会の意見書においても、液体バイオマス発電について「ディーゼルエンジンでありバイオマス発電の中でも特に調整力が高い」と評価されています。
2. 安全性が高い
液体バイオマスである植物油を採用するので、1気圧において引火点が250℃以上であれば、消防法による危険物扱いではなく市町村条例による「指定可燃物」扱いになり、安全性が高い燃料となります。
3. 地球環境に優しい
搾油植物の栽培、種子からの搾油、ロジスティクスから発電までのライフサイクル全体を通じて、第三者認証機関の認証取得済みの植物油燃料を使用するため、カーボンニュートラルに位置づけられており地球温暖化防止に役立つことが期待されています。
4. 経済性
前述の調達価格等算定員会「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」(令和4年2月4日)においても、バイオマス発電一般について「特に10,000kW以上の大規模設備では、一般木材等・一般廃棄物その他バイオマスなどの複数区分において、発電効率が高く、相対的に低コストで事業実施が可能」と記述されています。
5. コンパクトな施設設置面積
再エネ発電として有望視されている太陽光発電や風力発電は、広い設置面積を必要とする割に発電量が小さいことや、自然災害に対して脆弱なことが社会問題視されています。
一方、液体バイオマス発電の施設設置面積は、太陽光や陸上風力発電と比較して圧倒的に小さい利点(下表参照)に加えて、自然災害に対して強靭な特徴もあります。また、木質バイオマス発電と比較しても、燃料が液体のため燃料保管場所が小さいことに加えて設備利用率が高いことにより、施設設置面積が小さくなる利点があります。
2030年度における日本の電源構成である再生可能エネルギー36~38%(2019年度実績18%)を達成するためには、国土の狭い日本においては太陽光や陸上風力発電所の建設に限界があることを考慮すると、液体バイオマス発電方式は非常に重要な発電方式と言えます。
①液体バイオマス 発電所(当社企画) | ②太陽光発電所 (中国地方) | ③陸上風力発電所 (東北地方) | ④木質バイオマス 発電所(東北地方) | |
---|---|---|---|---|
施設設置面積 | 約40,000㎡ | 2,600,000㎡ (260ha) | 約5,455,000㎡ (545.5ha) | 約85,000㎡ (*1) |
発電端出力 | 102,750kW | 235,000kW | 50,000kW | 74,950kW |
設備利用率 | 約90% | 約18% | 約26% | 約72% (*2) |
出力あたりの設置面積(*3) | 0.43 ㎡/kW | 61.5 ㎡/kW | 420 ㎡/kW | 1.58 ㎡/kW |
①に対する倍率 | ─ | 約143倍 | 約976倍 | 約3.7倍 |
(*1)燃料保管場所を含む。(*2)一般木材等の場合。(*3)設備利用率を考慮した面積。
6. 木質バイオマス燃料のような問題を生じない
近年、木質バイオマス燃料については、その生産のために炭素固定された森林を伐採することでむしろ温室効果ガスの排出を増加させるのではないか、排出増加分の回収期間(カーボンペイバックタイム)が長期に及ぶのではないか、また生物多様性への影響があるのではないかとの疑義が呈されてきました。
2021年1月25日に公表された欧州委員会の報告書『The use of woody biomass for energy production in the EU』(JRC)では木質バイオマス燃料を使用する24のパターンを詳細に検討しています。そのうち、木質バイオマス燃料の利用に伴う炭素ストック喪失分の回収期間が短期(即時〜20年以内)または中期(30年〜50年)で済み、かつ、生物多様性を改善する又は生物多様性へのリスクが低いと評価されたのは、伐採残留物である葉や枝などの微細な木片を土地の性状により規定されるしきい値以下において使用する場合や複数種プランテーションによる旧農地への植林など5パターンしかありませんでした。
弊社グループが海外で実施する植林事業は荒廃地で実施するものであり、森林を伐採する過程がないため、カーボンペイバックタイムが非常に短期間で済みます。
また、バイオマス燃料も植林事業の管理過程から生じる果実の種子から製造するなど植林を維持しつつ農業と両立するアグロフォレストリー形式にて行うため、炭素の固定化が永続します。
その他、上記の植林事業および当発電所事業ならびにサプライチェーンの全体を通して、木質バイオマス燃料について指摘されている問題点が発生しないように計画されています。